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スラベン・ビリッチへのインタビュー

さて、背水の陣に陥ったジーコジャパン、次のクロアチア戦をどう戦うべきか。
これに関して面白い記事があった。
「運命」また日本が相手⋯サッカー・元クロアチア代表に聞く

岡田ジャパンが、1998年W杯フランス大会でクロアチアと対戦した時のディフェンダー、スラベン・ビリッチ氏(37)のインタビューである。この試合は、シュケルの得点で1-0でクロアチアが勝利した。日本は、アルゼンチン、ジャマイカにも負けて3連敗で1次リーグ最下位で敗退した。日本の置かれた状況がその時に似ているということから、スラベン・ビリッチ氏(37)へのインタビューということになったようだ。

【スラベン・ビリッチ氏インタビュー】
「中村だけでは厳しい」

——2大会ぶりに日本とクロアチアが対戦する

 「運命だね。あの時は同組にアルゼンチンという本命がいて、ブラジルがいる今回の組と似ている。日本には1-0で勝ったが、我々に大きなチャンスは少なく、引き分けてもおかしくない試合だった」

——当日は猛暑だった

 「試合開始時にはピッチ上の気温は43度あった。条件面では、サッカー人生で最も困難な試合だった。耐久力では日本が勝っていたが、(GKの)ラディッチが日本の決定的なチャンスを防いだ。シュケルの決勝点も相手GKが止められたかもしれなかった。私たちには少しの運もあった」

——当時の日本代表は

 「小さいけれど速いFWに、GKの川口も興味深かった。規律を持った良いチームで、そこに最大のスターの中田(英)がいた」

——日本はその後、進歩したと感じるか

 「もちろん。海外から最高級の監督が来ている。代表監督もジーコだ。才能ある国民であり、働く国民だし、聞く耳も持っている」

——98年と現在のクロアチア代表を比較して

 「しっかりとした守備で簡単に失点しない点は当時と似ているが、現代表は創造性や攻撃における個々の質に欠ける。98年には一人で試合を決められる天才がいた。日本戦のようなこう着状態でシュケルが単独で試合を解決したように」

——クロアチアはドイツ大会でどこまで行けるか

 「難しい組だ。初戦のブラジル戦に負ければ残る2試合に勝たねばならなくなる。クロアチアにとって、“何かをしなければ”という状況に陥るのは理想的ではない。ただグループリーグを突破すれば、そこからは一発勝負で何でも起こりえる。だからサッカーは人気のあるスポーツなんだ」

——日本の弱点は

 「まずは高さ。セットプレーは高さのあるクロアチアが得意だ。そして予測できないようなプレーから得点を生める天才的な選手が少ない。中村は良い選手だが、W杯レベルの大会で、彼一人で試合を解決するまでにはいかないだろう」
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私がこのインタビューで特に印象を持ったのは、ビリッチが『日本には勝負を1人で決められる天才がいない』と指摘していることである。つまり、元クロアチア代表のストライカー、シュケルのような天才がいない、という指摘である。

これは、おそらく、普通の日本人(サッカー指導者)の感覚からすれば、非常に驚くはずである。もっともサッカーを知らない人はそうは思わないだろうが。なぜなら、小笠原、小野、中田英寿、中村俊介、柳沢など、日本の少年サッカーチームや高校サッカーチームを指導して来た指導者たちの間では、10年20年の”天才”と言われて来たからである。にもかかわらず、ビリッチは断言した、という意味だからである。

クロアチアのビリッチにとって天才とはロマーリオやベベト、シュケル、古くはペレ、マラドーナ、ゲルト・ミュラーのような選手の意味である。今大会では、ロナウジーニョ、カカなどである。こういった選手が日本にいないとビリッチは言っているのである。

その昔、日本にJリーグがなかった頃も日本の少年サッカーは国際的に結構強かった。しかし、中学、高校、大学、一般と進むに連れてチームは弱くなった。これと似た傾向が今もあるということだろう。小学校や中学校や高校では天才と唱われるが、それが成人するとワールドクラスのトップレベルには辿り着かない。

ここに日本の教育制度の最大の問題点がある。サッカーはこういった問題点が誰の目にも比較的分かりやすく出るが、これは、多くのサッカー選手や監督が言って来たように、(例えば、ドゥンガ、ジーコ、ベンゲル監督)日本の教育制度一般の特徴なのである。科学教育であれ何であれ、この問題は日本社会のあらゆる分野に共通する深い問題なのである。たまたまそれがサッカーだと分かりやすいということなのである。だから、私は10年ほど前に「物理学界はJリーグに学べ!」を日経サイエンスに投稿したというわけだが、この10年というもの、一向に変わってはいないのである。

どうやれば、天才を育てられるか?
どうやって真のエリートを育むか?

これが、これからの日本の教育界の”悲願”となるだろう。
by Kazumoto_Iguchi | 2006-06-14 12:05 | WC2006
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